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東京高等裁判所 昭和54年(う)368号 判決 1980年2月28日

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(中略)

昭和四七年から同四八年にかけて中央公論社労働組合の組合員九名が同会社から解雇されたが、組合の執行部がその解雇撤回闘争に立ち上がらないことを不満とする九名の組合員は、中央公論社労働組合有志なるグループを結成し、他の出版労働者らの支援を得て、爾来右会社及び組合執行部と激しい敵対関係に立つていたところ、右有志グループを申請人とする地位保全仮処分事件の和解が不調に終つたため、右有志グループ及びその支援労働者らは会社に対する抗議とあわせて、右組合執行部に対し解雇撤回行動に立ち上がるべきことを説得しようとし、当時右組合の執行委員の地位にあつた山形が出社してくるのを待ちうけ、同人に対する説得活動に入つたものであること等一連の経過と事情は、関係証拠によつて明らかに認めることができる。

しかし、当初は被告人らから組合の執行部に対して説得を行う目的で行われた行為であつたとしても、これに応じようとせず、特に出社の途上における折衝については明らかに拒絶の態度を表明している山形に対し、その進路に立ち塞がつて社屋に入ることを阻止するとともに、執拗にその身辺につきまとい、これを取り囲んで同人の出社しようとする行動を遮り、そのもつれ合いの間に、感情の高まるに委せて原判決判示のような暴行に及ぶにいたつては、従前の経緯や山形の拒絶の態度に対する被告人らの言分がいかようなものであつたにせよ、もはや右暴行をもつて正当な説得活動の目的の範囲内にある行為ということはできないのであつて、その行為の手段及び態様はもとより被侵害法益の程度及び法益の権衡の点を考えても、行為の正当性の限界を超えていることは明白であり、いわゆる可罰的違法性又は実質的違法性を欠くものとはとうてい認められない。

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